14日は土曜日vv
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


ああそういえばと気がついたのは、
まだ短縮モードだった授業が午前までで終わってからのこと。
土曜日曜を前にしていたのでという
申し送りのためのHRがあり、
五月祭の執行委員から、
準備に関するあれこれの連絡を聞いて、さて。

 「では、ごきげんよう。」
 「ええ、月曜日にね。」

春とは名ばかりで、
油断するとすぐにも足元や肩口から冷えが忍び寄る、
相変わらずに気まぐれな気候に振り回されつつ。
シックなセーラー服の上、
合服の時期の重ね着として唯一許されている、
学園指定の濃色のカーディガンを羽織ったお嬢様たちが。
少しほど曇天気味の空なのを眉をひそめて見やりつつ、
それでも軽やかな足取りで、
そりゃあ晴れやかに教室から出て行かれる。

 「お花見には行かれました?」
 「それが、どうにもスケジュールが合わなくて。」

何しろいつまでも寒さが去らなくてのこと、
四月に入ってもなかなか開花の声を聞かなかったものが。
暖かい日和に切り替わった途端、
上野や千鳥が淵やという どこもかしこもで
一気に…という満開ぶりだったので。
お友達とお茶会風の鑑賞会を催すつもりが
間に合わなかったというお声も多々聞こえ。
それでという“代替”でもなかろうが、
親御がかりの宴を催したというご家庭もあれば、
習い事のせんせえのお宅に見事な一本桜があったので、
野点かたがた、先週 堪能しましたというお嬢様もおいで。
学園の敷地内の一角、東側のフェンスに沿うて、
結構見事な並木状態の木立があるので、

 「あれを眺めるので、十二分に堪能出来はしますが。」

仲のいいお友達や、同じ部活のお仲間と連れ立って、
それではお先にと次々帰ってゆかれる。
そんなクラスメートの皆様のはしゃぎようの中に、
お花見というフレーズが見え隠れするのへだろう。
誰の姿もなくなったからという一応の慎みをもって、
ぼそりと呟いたのが、
席に着いたままで頬杖ついてた ひなげしさんで。

 あの桜だって随分な樹齢のはずですし、
 脂が乗り切ってるとでも言うのでしょうか、
 お花のつきようにも厚みのある、
 結構な風格のある銘木でしょうにね、と。

 「…ヘイさん。
  素直に褒めてるように聞こえないのは
  もしかしてアタシの気のせいですか?」

今日の日直だったのでと、
黒板の隅、月日と曜日を書いた下にあった“草野”を消して、
次のお嬢様の苗字を書き直し。
出席簿を教卓からすくい上げてから、
お友達の待つ一角へ取って返した白百合さんのお言葉へ、

 「………当たりです。」

八つ当たりなんておよしなさいと、
暗に宥められてもいるのが判ったらしく。
図星を指されたと、
そこは素直に…ちょみっと語調がしおれた平八だったりし。
そのまま腕を投げ出し、
ぱふりと突っ伏してしまったお友達だったのへ。
傍らでやはり待っていた紅ばらさんこと久蔵殿が、
あれまあと、
小さなお口を揃えた指先で押さえてしまったほどだったが、

 「アタシらは先週楽しみましたが、
  それが叶わなかったお人もいるのでしょうに。」

元は河原だったか、少しほど斜面になった原っぱで、
土手沿いのジョギングロードに植えられた
見事な並木を一望しつつのお花見を。
仲良し3人とそれから、
それぞれの“保護者”の方々とという顔合わせにて、
暖かい日よりの中にて堪能したのが、丁度 先週のイースター。

 「前のお話ではそんなこと触れてもいませんでしたが。」
 「そういや そうでしたね。」
 「………。(頷、頷、頷)」

 ……揚げ足を取らない。(う〜)

余談はともかく。
彼女らが出向いた桜並木は、丁度満開の見ごろを迎えており。
他にもお花見の方々が居合わせたけれど、
そこは…此処のご近所という土地柄だったので、
いきなりバーベキューだの、
酔態もだらしないまま大声上げるご乱行も出ずの、
そりゃあ品のある集まりを堪能出来て。
暖かな陽気の下だのに、
まるで緋色の綿雪をまとったような
濃密な花のついた枝々が
なだらかな斜面へ沿うように
その腕を幾重にも延べていた様子は、
見惚れるほどに何とも圧巻だったし。
風になぶられ ゆらゆら重たげにゆったりと揺れる様は、
天然のスローモーションが利いていて、
いつまでも飽かず眺めていたくなったほど。

 『風が出て来たかの。』
 『そうだな。』

陽射に油断して肩から冷やすかも知れぬと、
ひなげしさんや紅ばらさんそれぞれへ上着を掛けて下さった、
五郎兵衛殿や兵庫せんせえだったのへ、
あれまあと微笑って見せつつ、その実、
うらやましいなと仄かに苦々しく思っていた白百合さんへも。

 『ほれ、陽気に誤魔化されていては風邪をひくぞ。』

ふわりと肩へ掛けられた温かさには、
覚えのある男臭い香りもついて来ていて。
え?え?と、レジャーシートの上から見上げた先には、

 『遅れてすまなんだな。』

申し送りに手間取ったと、
まさか来るとは思わなんだ、壮年警部補殿が立っており。
勘兵衛が今の今まで着ていたらしいスーツの上着、
少しばかり重みがあって、
頼もしい彼そのもののようで うっとりしもした。
そんな思わぬご褒美つきだった
夢のようなお花見を堪能したのは先週の週末のお話で。

 「明日は関東地方のお天気も下り坂だそうですし、
  雨に降られると判っているのだから、
  お出掛けはとっとと諦めて下さらないかしらって。」

ついついそんなこんな思ってしまったのでと、
いつになく筋違いな不平顔だったこと、
認めたひなげしさんが続けて言うには、

 「先週はそれほどでもなかったのに、
  今週はお花見用の和菓子やお弁当の予約が
  そりゃあもう、ずんとあったもんだから……ね。」

先週はお堅いパーティーとか
畏まっての集まりが多かったんだわ。
それから、今週は身内での集まりってとこ?
それでってコトで、
ゴロさんの手作りスィーツへの注文が殺到してねと。
相変わらずの悋気混じりな憤懣を
溜めていらしたらしき ひなげしさんの傍らでは、

 「兵庫の診療所も。」

先週末は予約なしのガラッガラだったからこそ、
ああやって花見にも行けたんだが。
今週は打って変わって、
風邪ひいただの体の節々が痛むだの、
先週頑張り過ぎたらしい、
じさまや ばさまが大勢予約を入れていてな、と。
紅ばらさんが ぼそぼそぼそっと、
やっぱり不平を並べておいで。
先週の幸せなひとときから一転、
恋しい人らそれぞれが
いかにもな事情から忙しくなったもんだから。
ひなげしさんも紅ばらさんも、
いつにも増して不平たらたらだったようで。
そんなお友達二人へ くすすと微笑んだ白百合さん、

 「13日の金曜日だったからかしらね。」

やーねーと冗談めかして言ったのへ、

 「………っ!」
 「なになに。
  久蔵殿ってば、気づいてなかったの?」

猫の子がお尻尾をぶわっと膨らませたように、
おおおうっと刮目し、
軽くのけ反りまでして驚いた久蔵のその様子の方こそ、
あとの二人には可笑しかったそれだったりし。

  逢いたい時に逢えて当たり前な彼女らには、
  そんな大切なお人を、
  それが ほんの1日でも、
  他所様から振られた忙しさに独占されるのが
  癪で癪でしょうがないのだろうけれど。

 「でもね、あのね?
  明日ってサ、4月の14日じゃない?//////」

 ……なんて。

ちょみっと頬染め、言い足した七郎次だったのへ、
あっと表情弾かれた、お友達二人の他愛なさよ。
チューリップの花束とオレンジを、
誰に吹き込まれたやら
ちゃんと用意するのは果たしてどの殿方か。
一番周到なのは、誰かしらねと、
それぞれにカーディガンへと袖を通しつつ、
随分と無茶なことを言い合うお嬢様たち、

 「今日のところは、カラオケにでも行こっか?」
 「あ、いいですねぇ。」
 「ぱひゅうむのvv」
 「そうそう、新曲の振り付けvv」

高いヒールも何のその、
キレッキレの難しい振り付けではありますが、
もう既にしっかと覚えましたものねと笑い合い。
勿論、寄り道なんて いけないことは致しません。
八百萬屋のお隣、
不定期営業のスタンドバーを借り切っての、
三華 オンリーステージを催しましょうよと。
先程までの憂鬱顔もどこへやら、
ひだスカートをひるがえし、そりゃあ朗らかに教室を後にした、
欧米ではちょびっと不吉な、
某日の金曜日のお昼下がりだったのでありましたvv





   〜Fine〜 12.04.13.


  *ぶっつけです、すいません。
   何しろ明日は例の日で、
   今年はその前日が
   何と金曜だったというおいしい設定、
   使わない手はないでしょうと。
   いきなり思い立った困ったおばさんだったりします。
   でもでも、あの壮年たちの内の
   一体 誰が覚えているものでしょか。
   ……征樹様、良親様、出番だぞ出番。
(笑)

  *こんなゲンの悪い日に手掛けたから
   落っこちたんじゃなかろかという飛翔体のニュースや、
   某 婚活詐欺嬢による(?)連続不審死事件の判決や、
   昨日の白昼、祇園で起こった暴走事故とか。
   不謹慎な言い方ながら、
   ワイドショー的には盛り沢山だった1日だったようですが。
   こちとら喉痛と鼻詰まりの復活で寝不足だったんで、
   そういうものから遠ざかっての
   何とはなく うとうとし通しの1日でした。
   遠くの惨事より自分への小事に振り回されてる辺り、
   おばさんたら立派に“小者”です、はい。

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

メルフォへのレスもこちらにvv


戻る